医師の6割 法令で義務づけの線量計装着せず 産業医科大調査

非常に気になる記事なので、忘備録として残しておきます。

医師の6割 法令で義務づけの線量計装着せず 産業医科大調査 | 医療 | NHKニュース

【引用はじめ】

2021年1月11日 0時24分 

医療が高度化し放射線を使う機器が増える中、医師の6割が法令で定められている線量計を装着していないことが、産業医科大学のグループの調査でわかりました。グループは、医療従事者の被ばくの実態が正確に把握できていないおそれがあり問題だと指摘しています。

医療機関で放射線を扱う場合、医師らは被ばく量を測るために線量計の装着が法令で義務づけられています。

産業医科大学は去年、医療従事者1348人を対象に、胸部と腹部の線量計の装着状況を抜き打ちで調査しました。

その結果、医師で61%、看護師で23%、全体で34%が装着していなかったことがわかりました。

グループによりますと、医療従事者の装着率について、この規模の調査は初めてだということで、装着率が低く、医療従事者の被ばくの実態が正確に把握できていないおそれがあることがわかったとしています。

医療が高度化する中、繰り返し医療機器を使う医師らの被ばくは恒常的になっていて、全身への被ばくの影響を表す「実効線量」という値でみると、2018年度までの10年間で、国が行政指導を行う20ミリシーベルトを超えた人が年平均で270人近く出ています。

産業医科大学の欅田尚樹教授は「把握されている以上に医療従事者は現場で被ばくをしているとみられ、問題だ。国や業界の対応が求められる」と話しています。

調査グループ「装着率の低さに驚き」

抜き打ちで線量計の装着率の調査を行った、産業医科大学の研究グループの盛武敬准教授は「線量計の装着を徹底すれば、かなり多くの人で被ばく量がグンと上がるはずだ。中には、被ばく量が限度を超えると放射線業務ができず、医療が成り立たなくなると考える医師もいるが、軽減する対策があるので、まずは正確な状況を把握することが肝心だ」と指摘しました。

また、研究グループの森晃爾教授は「原子力発電所では、作業員が1回線量計をつけ忘れただけで、大ニュースになる。それと比べた医療従事者の装着率の低さに驚きを隠せない」と話し「このままの状態が続くおそれもある。病院自体がどのように被ばく量を管理し、軽減していくかなどのマネジメントシステムを導入して、法令順守を確実に行う仕組みを構築する必要がある」と述べ、病院、そして業界としての対策の重要性を訴えています。

研究グループの欅田尚樹教授は「医師は、医学部生のときから放射線のリスクや対策についての教育を受ける機会が非常に少ないと思う。学会などを通じて放射線を扱う業務の見直しや線量計の装着について周知していく必要がある」と話し、教育の課題を指摘していました。

医療現場 増える放射線利用

医療現場では、検査や手術が高度化する中で、放射線を使う医療機器が増えています。

東京 港区にある虎の門病院脳神経血管内治療科の鶴田和太郎部長によりますと、例えば、脳の血管の病気を治療する際に放射線が使われるということです。

患者の負担を減らすため「カテーテル」という細い管を患者の足の付け根に入れ血管を通じて脳に届けて、患部を手術する方法ですが、そのままでは頭部の中の状況はわかりません。

このため「血管撮影装置」という特殊な機器を用いて患者の頭部に放射線を当てて、透視した血管をモニターに映し出しながら、手術を行うということです。

ただ、この際に放射線は患者の頭部やベッドに当たるなどして、一定の量が室内に散乱することから、手術を行う医師らは多少の被ばくをしてしまいます。

なるべく被ばく量を減らそうと、この病院では、血管撮影装置の放射線を出す場所の近くに、放射線を通しにくい遮蔽の板を設置するほか、医師らは鉛の入ったプロテクターを着たり、のどの甲状腺などの被ばくを避けるマフラーのような防護具や、目の水晶体などの被ばくを避けるゴーグルを装着したりする対策をとっているということです。

被ばくで皮膚がんの医師 意識の改革訴える

北海道にある市立函館病院で副院長を務める佐藤隆弘さんは、整形外科医として長年、放射線を扱う業務に当たってきました。

脊椎の検査や骨折の手術などでは患部の状態を知るために放射線を用いるX線透視装置を使うことが多く、佐藤さんは、利き手である右手の親指を中心に長年、被ばくが続いたということです。

そして2000年ごろに指に異常が起き始め、2011年には「皮膚がん」と診断されました。

放射線による影響だとして、後に公務災害に認められています。

佐藤さんは、ふだんから胸部には線量計を装着していました。

その計測から全身への影響を表す「実効線量」は基準内に収まっていました。

しかし指にはめる線量計はあまり装着しておらず、指の被ばく量を正確に測定できていませんでした。

佐藤さんは「当時は、深刻に考えていなかった。当たっても痛くない放射線に対して、医師の意識はあまり高くないのが現実で、周りの医師たちの中にも爪が黒っぽくなるといった似たような症状の人もいる」と話していました。

副院長の現在、院内で被ばく対策に力を入れているということで「放射線は医療に必要不可欠だが、使い方を間違えるととんでもないことになり得る。被ばく量の正確な測定や減らす方法を真剣に考えないといけない」と話し、業界として意識の改革と対策の徹底を訴えていました。

国も医療機関対象に研修

厚生労働省も医療従事者が線量計の装着を徹底できていない状況などを把握していて、医師らの被ばくを抑えようと、今年度から全国の医療機関を対象にしたオンラインによる研修を始めています。

およそ400の医療機関が参加した研修では、医療機関ごとに被ばく量低減の計画を立てて、医療従事者への教育などを実施していく必要性を伝えています。

厚生労働省は「被ばくを抑えるため、医療機関に対して線量計の着用を徹底し、被ばく低減策を講じるよう、今後も研修などを通じて求め続けたい」としています。

【引用終わり】

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