パワーハラスメントの対策。企業における有効な対策とは?

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ハラスメントの無い企業の定義
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目次

パワーハラスメントの防止。企業として重要な2つのポイント

パワハラを防ぐというのは、一日二日でできるものではありません。一番理想的なのは、「パワハラを防ぐ風土が自然とできている」ということなのですが、それが簡単にはできないのです。

ですから、恒常的にパワハラを防ぐ取り組みを行っていく必要があるのですが・・・そのためには、2つのポイントがあります。

企業として取り組むべきパワハラ防止の2つのポイント

  • パワハラ防止法にのっとったパワハラ防止措置の履行
  • パワハラを防ぎ、且つ、ヒトの活力を高める施策

パワハラ防止法に則って、パワハラ防止措置を行っていくことは企業として当然のことなのですが、真にハラスメントを防いでいくためには、ヒトの活力を高める施策を企業内で行っていく必要があるのです。

企業に課せられるパワハラ防止措置とは?
(パワハラ防止の基本中の基本)

パワハラ防止法とは、労働施策総合推進法第9章のことです。

そして、この法律の第三十三条の二には、以下のような規定があります。

(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。
 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
 前二項の規定は、指針の変更について準用する。

労働施策総合推進法

この規定によって、厚生労働大臣は指針を定め、その指針を企業が遵守するということなのです。

この指針の全文は、こちらを参照ください。

では、この指針によって、企業にはどのようなパワハラ防止措置義務が課せられているのでしょうか?

パワハラ防止法が企業・法人に義務付けること
事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 ⑴ 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントがあって はならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
 ⑵ ハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内 容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 ⑶ 相談窓口をあらかじめ定めること。
  ⑷ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。 また、広く相談に対応すること。
職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応 
 ⑸ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
  ⑹ 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
  ⑺ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
  ⑻ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
併せて講ずべき措置
 ⑼相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
 ⑽事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度の利⽤等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

このような、パワハラ防止措置義務を会社は実施する義務を負うのです。

これを簡単にまとめると、以下のようになります。

パワハラ防止措置を簡単にまとめると・・・・

  1. 就業規則でパワハラを厳正化する
  2. パワハラ相談窓口を設置する
  3. パワハラの相談をパワハラの相談窓口が受けたら、迅速に事実を確認する。
  4. パワハラの相談に対して、必ず再発防止措置を講じる。
    • 事実調査で、パワハラの事実が認められなくても、同様
  5. ハラスメントの事実に対しては、適正な対処をする。

パワハラ防止を未然に「積極的に」防止することが、活力ある企業づくりに繋がる

パワハラ防止を未然に防ぐための基本として、「研修」を定期的に行って、キチンと教育していくことも必要でしょう。

私たちは、実際にハラスメント防止研修を実施していますし、その研修資料も公開しています。

しかし、大事なことは、社員ひとりひとりが生き生きと働くことができる環境づくりに会社として取り組むことが大事です。そのためには、①ハラスメントの本質を知り、②どういう取り組みをすべきなのか、を知り、より積極的でむしろハラスメント防止の枠組みさえはみ出すような取り組みをしていくことが必要なのです。

では、ハラスメントの本質とは何でしょうか。それは心理から見ていくことが大事です。

パワーハラスメントの本質を心理から見る。

ハラスメント行為をなぜしてしまうのか、不思議に思ったことはないでしょうか? わかってやっているのか、それとも無自覚なのか? そもそも、パワハラをしてしまうその心理とは何?

原因が出来れば対処できるのですが、原因が分からなければ再発防止に向けての取り組みはできません。だからこそ、ハラスメントの心理を知る必要があるのです。

心理を知るために、まず、知っていくべきことがあります。すべての行為には、動機があるということです。「○○したいから、○○する」と例えればわかりやすいでしょうか。ラーメンを食べたいからラーメンを食べるのと同じように、欲求があるから、その行為をするのです。

しかし、ハラスメントしたいから、ハラスメント行為をする人はいません。つまり、ハラスメントを望んで行う人間というのは、いないのです。欲求や動機というのは(快)を得たいから起こるものですから、意識的にハラスメントをしたいという欲求はあり得ないのです。つまり、ハラスメント行為の動機(欲求)こそが、ハラスメントの本質なのです。

ハラスメントの本質とは「自分だけが心理的優位に立つこと」

では、ハラスメントの本質について、お話ししましょう。

まず、あなたに二つの質問をします。

  • 「これは、愛情のあるハラスメントだ!」と実感したことはあるでしょうか? 
  • 「愛情のあるハラスメントってどういうものですか?」と聞かれて、答えられるでしょうか? 

おそらく答えられないはずです。私たちは多くの方にこの質問をしていますが、全ての人は答えられません。

そうです。ハラスメント行為には共通することがあります。「ハラスメント行為には、実感できる愛情が無い」ということなのです。

ハラスメント行為には「認め合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「許し合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「わかり合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「触れ合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「支え合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「褒め合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「気づき合い(愛)」が無い

ハラスメント行為には「気配り合い(愛)」が無い

それぞれの「合い」に「愛」を掛けてみたら、より分かりやすくなると思いますが、ハラスメント行為は、愛情が無く一方的であるという特徴があるのです。

愛情が無く一方的であるということによって、ハラスメント行為のもう一つの特徴があらわになってきます。それは、「相手の価値や存在を下げる行為」ということです。

相手の価値や存在を下げる行為とは・・・・

自己正当化し、責任転嫁して、他者否定する言動。
主なものには、嫌味・皮肉・非難・批判・否定・無視・無関心がある。
そして、その動機と言動のパターンには、以下のようなものがあげられる

  • 私正しい/あなたが悪い・・私が正しいことを証明するために、あなたがが悪いということを言い続けたりやり続けたりする。
  • 私正しい/間違っているのはあなた・・私が正しいことを証明するために、あなたが間違っていることを言い続けたりやり続けたりする。
  • 私悪くない/悪いのはあなた・・私が悪くないことを証明するために、悪いのはあなただということを言い続けたりやり続けたりする。
  • 私間違っていない/間違っているのはあなた・・私が間違っていないことを証明するために、間違っているのはあなただということを言い続けたりやり続けたりする。
  • 私間違っていない/私を否定するな・・私が間違っていないことを証明するために、私を否定するなということを言い続けたりやり続けたりする。

では、ハラスメント行為の動機とは何でしょうか?それは、「自分だけが心理的優位に立つため」なのです。これをハラスメントの心理と言います。

ハラスメントの心理

自分だけ心理的優位に立つため【動機】に、相手の価値や存在を下げる行為

これは、「自分だけが優位に立つため、○○する」という文を並べてみると、よくわかります。

  • 自分だけが心理的優位に立つために、相手を否定する
  • 自分だけが心理的優位に立つために、自己正当化する
  • 自分だけが心理的優位に立つために、相手を無視する
  • 自分だけが心理的優位に立つために、相手を批判する

では、何に対して「自分だけが心理的優位に立とう」としているのか、見てみましょう。

ハラスメントの心理は、無自覚で無意識の「恐れ・怯え」からはじまる

人間は誰でも、自分を守ろうとしています。

  • 怒られたくない
  • 責められたくない
  • 批判されたくない
  • バカにされたくない
  • 仲間外れにされたくない
  • 見放されたくない
  • 見捨てられたくない
  • 無視されたくない
  • 嫌われたくない
  • ダメと言われたくない など・・・・・・

要は、自分が不快な目に合うのは、避けたい!と思っているのです。これを「失敗回避欲求」と言います。そして、これを言い換えれば、「失敗することを恐れて、怯えている」のです。例えば…

恐れ、怯えのパターン例

  • 嫌われることを恐れている
  • 無視されることを恐れている
  • 仲間外れにされることを恐れている
  • ダメだと言われることを恐れている
  • 責められることを恐れている

といった具合です。

しかし、恐れや怯えは表現すること自体が怖いものです。ですから、人は恐れや怯えの感情を隠します。・・・・お判りでしょうか。恐れや怯えの感情を隠すために、「自分だけ心理的優位に立とうと」するのです。

では、恐れや怯えの感情はどういうところから来るのでしょうか? それは、「不快感情」です。簡単に言えば、人は不快感情に遭うことを恐れて・怯えているのです。

では、不快感情には、どのようなものがあるのでしょうか。感情リストをお見せします。

感情リスト

快か不快か基本感情仮面感情:その人が最初に持っていた基本感情(喜び 喜べない 悲しみ 恐れ 怒り)が禁止されたり、抑圧されたり、抑制したりした結果出現した二次的感情のこと。つまり、甘え残しや思い残し、言い残しなど、「わかって欲しい欲求 認めてほしい欲求 かまってほしい欲求 思い通りにしたい欲求」が満たされなかったときや、あきらめたのにあきらめきれない中途半端なときに出現する(但し、快感情を除く)。
快感情喜び嬉しい 楽しい 面白い 安心する 心地よい 美味しい きれい
不快感情喜べない喜べない 楽しめない 嬉しくない 面白くない しらける ネクラ むっつり 無口 無表情 無力感 優越感 不機嫌 不愉快 意味づけ ガッカリ
不快感情悲しみ淋しい 憂鬱 気になる 後悔 不安 情けない わかんない 見たくない 不信感 つらい 苦しい 罪悪感 自責感 自己卑下、意味づけ 依存 支配 混乱 逃げる 警戒心 あきらめ いじける みじめ 自己嫌悪 無力感 悲しい 空しい 虚無感 もういい 失望 否定 絶望 拒絶 疎外感 モヤモヤ
不快感情恐れ不安 心配 妄想 否定 焦り 混乱 あきらめ 見られたくない 依存 妥協 猜疑心 落ち着けない 見たくない 支配 服従 劣等感 空騒ぎ 自己防衛 話のすり替え 良いカッコしい 強がり 我慢 怯え 警戒心 逃避 嫌悪感 比較 意味づけ はぐらかし やばい 恥ずかしい もったいない 虚勢 対抗 ざわざわ
不快感情怒り
二次感情
イライラ むかつき 焦り 諦め 不平 不満 支配 無気力 悔しい 嫉妬 憎しみ 恨み すねる うらやましい ねたみ 敵意 殺意 優越感 責任転換 自己正当 批判 非難 否定 拒否 拒絶 排除 許せない めんどくさい 時間からの支配逃れ 支配逃れ 嫌味
怒りの感情は、悲しみや恐れの感情とセットで現れます。

この不快感情を恐れて、自分だけが心理的優位に立とうとするのです。

では、自分だけ心理的優位に立とうとして、どういう行動をとっていくのか、見てみましょう。

パワハラとなるコミュニケーションと、その内面

ハラスメントは、自分だけ心理的優位に立とうとすることで無意識に無自覚で起こる行為です。
無意識無自覚にその行為を行っているのですが、「自分だけ心理的優位に立とうとする」部分は変わりないので、行為と動機は一致するのです。

では、ハラスメントをする人たちがどういう言動をとるのか、見てみましょう。

そして、その内心(相手に対する本音)は、以下のようになります。

つまり、相手に対して拒絶感を抱いていたり拒否感を感じていたりするので、思いやりが生まれないのです。

パワーハラスメントを防ぐために、こころがけること・・何に取り組むべきか。

パワハラを防ぐためには、「相手の気持ちを分かる」「そして、褒める」の双方向のコミュニケーションが交わされる風土を作っていく必要があります。

触れ合い
認めあい
分かり合い
許し合い
支え合い
褒め合い
気づき合い

これらの合い(愛)を一つ一つのコミュニケーションの積み重ねで育てていくことが大事なのです。

気持ちを「知って、分かって、認めて 褒める」がパワハラにならないコミュニケーションの基本

では、どのように分かり合うこと、認め合うこ゚とを積み重ねていけばよいのでしょうか?

それは、相手の気持ちを「知って、分かって、認めて、褒める」ということなのです。

相手の気持ちを知る、そして、それを分かって受け入れることが大事なのです。そして、それをキチンと褒める、ということです。

「気持ちを分かってもらえた~」の大切さ

気持ちを分かってもらえると、人には安心感が生まれます。だからこそ「褒める」ことで人間関係を変えていくことが大事なのです。

ここにある、「言葉の習慣」こそ、まさに「褒める」ということなのです。

気持ちを分かるとは、「欲求を満たすこと」

人には、大まか以下の欲求があります。

安心したい

楽でいたい

わかって欲しい

認めてほしい

かまってほしい

思い通りにしたい

特に、わかって欲しい 認めてほしい かまってほしい 思い通りにしたい の4つの欲求をキチンと満たしてあげていくということが大事なのです。その上に安心・楽が生まれてくるということなのです。安心は「成長・信頼」の土台となりますから、この欲求を満たしていくことが大事なのです。

欲求を満たすための「褒める」の方法・手段はこれだけある。

結局のところ、人の成長を促す「褒める」が必要になってくる。ということです。その方法・手段も以下のようにたくさんあるので、一番使いやすいものを、その時その時に選べばよいでしょう。

パワハラの無い企業とは

では、本質的にパワハラのない企業というのは、どういうものでしょうか? 企業はどういう取り組みをしていく必要があるのでしょうか? 

その答えは「人を活かす」ということに他なりません。「人が活きる経営」こそが、パワハラのない企業づくりに繋がっていくのです。

経営の視点から見た「パワハラのない会社の定義」

経営の視点から見たときに、「人を活かす」ということがどういうことなのか。それは「人間らしく活きる」「社会の役に立つ」「組織やチームワークとして機能して、好循環を生み出す」の3つの視点が必要です。ですから、私たちはパワハラのない会社というのを、以下のように定義しています。

これが具体的にどういうことなのか、見ていきましょう。

パワハラ防止には、「経営理念の浸透」がとても大事

企業における理念とは、「会社と会社に関わる人が幸せになる法則」のことです。目指す姿でもあり、その行きつく先には「一人一人の幸せな姿」があります。そして、幸せな姿とは、活き活きと生きている姿でもあります。それを常に目指していくのです。

「心と体の健康が維持しやすい」状態とは?

活き活きとし続けるための環境づくり、ということもできるでしょう。病気をしない、ケガをしない、事故をしない心がけをする環境をつくっていくことはもちろんのこと、病気やけがをしても治療に専念できるという環境、そして、それを社員が快く受け入れる環境を作っていくことが大事です。

一人一人の能力が活きる状態とは?

ひとりひとりの専門性・長所・魅力が伸びて成長するということです。そこには人間性の成長、社会への貢献も含まれていきます。

社員間のコミュニケーションが円滑であるとは?

つねに触れ合い 認めあい 分かり合い 許し合い 支え合い 褒め合い 気づき合い に溢れたコミュニケーションをとり続ける風土であるということです。

経営環境が改善し続ける状態とは?

「人」の部分で経営環境と言えば、①人が辞めない、②幹部として育っていく、の循環を作っていくことです。この循環が強靭な経営体質を作っていく根幹となるのです。

まとめ

パワーハラスメントに対応するときには、パワハラ防止措置を講じるだけでなく、人を活かしていくという意識を持つことが大切だと私たちは考えています。

パワハラ対策で悩んでいる企業さまは、是非、私たちにご相談いただければと思います。

ハラスメント防止の研修とコンサルティングを行っています。

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