トヨタ パワハラの問題点。再発防止策の観点も含めて。
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目次
トヨタ社長のパワハラへの謝罪がニュースに
トヨタ自動車の豊田章夫社長が、入社3年目に自死した社員の遺族の方々に謝罪をして、大きなニュースとなっています。(いずれも有料ニュースなので、ご了承ください)
毎日新聞の報道によると、今回には、以下の経緯があります。
ポイントとしては、
- 2016年4月~6月ごろには、自死した男性のパワハラ情報が管理職に複数寄せられていた。
- 休職時に産業保健部門に、パワハラ被害を訴えていた。
- 職場復帰時に、パワハラしていた上司と同じフロアに。その後に「死にたい」などと同僚らに漏らすようになる。
と言ったことが挙げられます。
その他、このパワハラの中では、以下のようなことがあったとされています。
管理職や産業保健部門に情報が寄せられていること。遺族の代理人弁護士からの情報でも、かなりのパワハラが日常茶飯事に行われていることがわかります。
トヨタが遺族に示したパワハラ再発防止策
トヨタのホームページによると、トヨタがとったパワハラ再発防止策は、以下のものです。
引用しましょう。
2017年に若手社員が亡くなるという痛ましい事案が発生しました。亡くなられた故人に対し改めてご冥福をお祈り申し上げ、衷心より哀悼の意を表します。
その後、2019年に豊田労働基準監督署による労働災害であるとの判断の中で、当時の上司によるパワーハラスメントを伴う行き過ぎた指導があったことが認められました。
当社としましては、大切な社員の尊い命が失われた事実を真摯に受け止め、このような痛ましい事案を再び起こさないよう、再発防止に向けた取り組みを検討、実施してまいりました。
当社は、今回お知らせする再発防止策を推進し、パワーハラスメントを断固として許さないという姿勢のもと、社員一人ひとりが周囲に関心を持ち、自分以外の誰かのために行動できる「YOUの視点」を持った人財づくりを進め、一人ひとりの社員が安心して働ける、風通しの良い職場風土を築くよう、努力を続けてまいります。
再発防止に向けた取り組み
「風通しのよい職場風土づくり」、「パワーハラスメント行為を行わないマネジメント」、「メンタルヘルス不調者に対する適切な対応」等の施策について取り組みを進め、社内から、パワーハラスメント行為の撲滅を目指します。
- 声を出しやすい職場づくりに向けた取り組み
令和2年4月に、これまでの相談窓口を「スピークアップ相談窓口」に統合し、匿名での通報、職場の同僚や家族など第三者からの相談も受け付けているほか、若手社員に対する毎月のアンケートの実施、職場の身近な相談先として、職場相談員の設置を進めております。こうした施策を通じ、従業員の困り事や、職場の課題を早期に発見・解決してまいります。
- パワーハラスメントに対する厳格な姿勢を就業規則に反映
令和2年4月に就業規則を改定し、パワーハラスメントの禁止、およびパワーハラスメントを行った際の懲罰規定について、より明確に記載いたしました。
- 異動時における評価情報の引継ぎの強化
令和2年10月に、従業員の評価や、ポスト長の職場マネジメントに関するアンケート結果などの個人情報を一元管理するシステムを導入しております。これによって、過去の評価や人事情報を確認することが可能となり、今まで以上に本人の適性を踏まえた業務アサインを行い、過去から一貫性のある育成を実施してまいります。
- マネジメントに対するパワーハラスメントの意識啓発
令和2年4月より、すべての幹部職・基幹職を対象に、パワーハラスメント防止の教育を再度実施しております。また、評価基準を見直し、今まで以上に「人間力」のある人材、周囲へ好影響を与え信頼される力を持つ人を評価します。加えて、役員、幹部職・基幹職を対象に、360度アンケートを導入いたしました。対象者の強み・弱みに関する周囲の声を集め、本人にフィードバックすることで、自らの行動を振り返り、改善につなげてまいります。
- 休務者の職場復職プロセスの見直し
令和2年5月より、休務者の状況把握、復職可否判断、職場復帰後の職場環境面を含むケアについて、産業医、人事労務スタッフ・職場がこれまで以上に緊密に連携し、本人のコメントや主治医の意見も踏まえ、円滑な職場復帰をサポートする体制を構築してまいりました。
また、産業医が、休務者のサポートや職場復帰後のフォローを適切に行うため、令和2年12月より、精神科専門医が常駐する相談センターを開設しました。対面又はオンラインによって、メンタル不調者や上司との面談を行い、その結果に基づいて、産業医に対し、専門的立場からのアドバイスを提供しています。
今後も、体制改善に向けて努力してまいります。
率直に感じたところを述べると、「機能するの?」という疑問が沸き立ちました。
実は、大手企業の場合、表向きはハラスメント防止体制がしっかりとしているところが多いのです。トヨタ自動車でも、表向きはしっかりとしたパワハラ防止規定を持っていたはずです。
一部報道では、これを遺族に示した、とのことですが、気になる部分があります。
2 パワーハラスメントに対する厳格な姿勢を就業規則に反映
令和2年4月に就業規則を改定し、パワーハラスメントの禁止、およびパワーハラスメントを行った際の懲罰規定について、より明確に記載いたしました。
これは、もともとパワハラ防止法(改正労働総合施策推進法)が令和2年6月から施行されることに対応しての改定である可能性が高いです。
ということは、法律的にやるべき対応をしたことに対して、対応をしたまでのことであり、そこに社員の死を絡ませたとも取れます。
実際に、あるトヨタグループの会社(トヨタ本流13社のうちの一つ。)では、ハラスメントの相談から再発防止までの対応マニュアルができていました。なのに、それを社員に周知せず、機能させていなかったのです。これを私たちが知っているのは、多くのパワハラ個人相談の中で、トヨタグループの方の相談も受けているからです。
ですから、これだけ再発防止策を講じても、「表向きだけで、全く機能しない」ということは起こりうるのです。正直、私たちはこのトヨタの再発防止策に対して、こう感じました。
- あまりにも、システマチックな再発防止策である。
今回の経緯を一つ一つ細かく見ていくと、「表面的に」対応している部分があまりにも多いなあと感じるのです。
ガタイは立派だけど、機能しない再発防止策になるのではないか?と正直不安です。
まとめ トヨタの何が問題だったのか
これは答えは明確です。パワハラの情報が寄せられた時に、組織として動かなかった!という事です。それに付け加え、
- 組織としてもパワハラ問題だ!と何が何でも問題解決するぞ!と意思を持って動く社員が誰一人いなかった!
ということも大きいと思います。
パワハラ再発防止策がシステマチックになると、致命的な欠陥が出てきます。
- ハラスメントを自分事として考えず、システム=ルールの中で再発防止をする人間が100%となること。
- そのため、形だけ再発防止になり、当事者が納得する解決に遠く及ばない
- 形だけの再発防止ゆえに、当事者が追い詰められていく
トヨタの場合、「カイゼン」はじめ、業務が非常にシステムの中で進んでいきます。そのため、人間的な情熱をもって取り組まなければいけないハラスメント対策が、結果的には効果がない! ということに繋がっていくのです。ですから、当時、パワハラ情報を管理職に寄せた人たちも、「何が何でもこれは、解決しなければいけない!」という情熱を持っていたわけではなく、ただ情報を寄せただけだったのです。
ハラスメントは、「何が何でも解決するぞ!」という情熱があれば、解決できるものでもあります。憎しみでも正しさでもなく、人らしく働くために自分の誇りをもって解決することです。
トヨタ系列の会社やメンタル疾患が多いと言われています。システムにまみれて、心から誇りをもって働けない会社だとも感じます。会社として厚く守られることで、社員が人らしさを失っている会社だということも、率直に感じています。
人間らしく、誇りをもって「ハラスメントを無くす」情熱をもつことが大切です。
私は、トヨタ自動車が社員ひとりひとりが「トヨタの社員の枠を超えても」、人間らしく生きることができる社風になるべきだと思います。
追記、上記とは、また別のトヨタのパワハラの情報
2022年1月31日。上記とはまた別件で、トヨタは遺族と和解しました。
この和解の内容は、金額こそ、明示されていませんが、遺族側の支援団体が内容を明示しています。
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