パワハラの定義について。法律で書かれていることを詳しく教えてください。
パワハラ防止の法律は、労働総合施策推進法
企業にパワハラ防止措置を義務付けるのは、労働総合施策推進法です。その、パワハラ防止の部分のみを紹介すると、こうなります。
労働総合施策推進法 パワハラ防止部分
第九章 職場における優越的な関係を背景とした⾔動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等
労働総合施策推進法
(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において⾏われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇⽤する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇⽤管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を⾏つたこと⼜は事業主による当該相談への対応に協⼒した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
4 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意⾒を聴くものとする。
5 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
6 前二項の規定は、指針の変更について準⽤する。
(国、事業主及び労働者の責務)
第三十条の三 国は、労働者の就業環境を害する前条第⼀項に規定する言動を⾏つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国⺠⼀般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、優越的言動問題に対するその雇⽤する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協⼒するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法⼈である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
4 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第⼀項の措置に協⼒するように努めなければならない。
(紛争の解決の促進に関する特例)
第三十条の四 第三⼗条の二第⼀項及び第二項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成⼗三年法律第百⼗二号)第四条、第五条及び第⼗二条から第⼗九条までの規定は適⽤せず、次条から第三⼗条の八までに定めるところによる。
(紛争の解決の援助)
第三十条の五 都道府県労働局⻑は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方⼜は⼀方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導⼜は勧告をすることができる。
2 第三⼗条の二第二項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準⽤する。
(調停の委任)
第三十条の六 都道府県労働局⻑は、第三⼗条の四に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方⼜は⼀方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第⼀項の紛争調整委員会に調停を⾏わせるものとする。
2 第三⼗条の二第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準⽤する。
(調停)
第三十条の七 雇⽤の分野における男⼥の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四⼗七年法律第百⼗三号)第⼗九条から第二⼗六条までの規定は、前条第⼀項の調停の⼿続について準⽤する。この場合において、同法第⼗九条第⼀項中「前条第⼀項」とあるのは「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇⽤の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四⼗⼀年法律第百三⼗二号)第三⼗条の六第⼀項」と、同法第二⼗条中「事業場」とあるのは「事業所」と、同法第二⼗五条第⼀項中「第⼗八条第⼀項」とあるのは「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇⽤の安定及び職業生活の充実等に関する法律第三⼗条の四」と読み替えるものとする。
(厚⽣労働省令への委任)
第三十条の八 前二条に定めるもののほか、調停の⼿続に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第十章 雑則
(助⾔、指導及び勧告並びに公表)
第三十三条 厚生労働大臣は、この法律の施⾏に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導⼜は勧告をすることができる。
2 厚生労働大臣は、第三⼗条の二第⼀項及び第二項(第三⼗条の五第二項及び第三⼗条の六第二項において準⽤する場合を含む。第三⼗五条及び第三⼗六条第⼀項において同じ。)の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
(資料の提出の要求等)
第三十五条 厚生労働大臣は、この法律(第二⼗七条第⼀項、第二⼗八条第⼀項並びに第三⼗条の二第⼀項及び第二項を除く。)
を施⾏するために必要があると認めるときは、事業主に対して、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。
(報告の請求)
第三十六条 厚生労働大臣は、事業主から第三⼗条の二第⼀項及び第二項の規定の施⾏に関し必要な事項について報告を求める
ことができる。
2 (略)
(権限の委任)
第三十七条 この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その⼀部を都道府県労働局⻑に委任することができる。
2 (略)
(適用除外)
第三十八条の二 第六条から第九条まで、第六章(第二⼗七条を除く。)、第三⼗条の四から第三⼗条の八まで、第三⼗三条第⼀項(第八章の規定の施⾏に関するものに限る。)及び第二項並びに第三⼗六条第⼀項の規定は国家公務員及び地方公務員について、第三⼗条の二及び第三⼗条の三の規定は⼀般職の国家公務員(⾏政執⾏法⼈の労働関係に関する法律(昭和二⼗三年法律第二百五⼗七号)第二条第二号の職員を除く。)、裁判所職員臨時措置法(昭和二⼗六年法律第二百九⼗九号)の適⽤を受ける裁判所職員、国会職員法(昭和二⼗二年法律第八⼗五号)第⼀条に規定する国会職員及び自衛隊法(昭和二⼗九年法律第百六⼗五号)第二条第五項に規定する隊員については、適⽤しない。
(罰則)
第四十一条 第三⼗六条第⼀項の規定による報告をせず、⼜は虚偽の報告をした者は、二⼗万円以下の過料に処する
この法律(労働施策総合推進法=パワハラ防止法)は、パワハラをどう定義しているの?
この法律は、第30条の二第一項で、パワハラについて「職場において⾏われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇⽤する労働者の就業環境が害されること」と定義をしています。
分かりやすく言うと・・・・・
パワハラの定義
①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③その雇用する労働者の就業環境が害されること
と分けることができます。
つまり、この三つの要素が全て揃ってパワハラと言えます。
となります。では、それぞれの要素についてみてみましょう。
「職場において行われる優越な関係を背景とした言動」とは。
「職場において行われる優越な関係を背景とした言動」とは、
業務を遂⾏するに当たって、当該言動を受ける労働者が⾏為者とされる者に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が⾼い関係を背景として⾏われるものを指します。
ハラスメントパンフ.indd (mhlw.go.jp)
と、厚生労働省の出しているハラスメントパンフではなっています。
この中の「⾏為者とされる者に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が⾼い関係」とは、要は、心理的に優位に立つものと考えるとわかりやすいでしょう。パワハラというと、上司から部下 先輩から後輩という関係が容易に連想されますが、部下から上司、同僚から同僚の関係でも成り立ちます。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは
「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、⼜はその態様が相当でないものを指します
ハラスメントパンフ.indd (mhlw.go.jp)
簡単に言えば、「業務で必要のない言動」と言えます。
「その雇用する労働者の就業環境が害されること」とは
「その雇用する労働者の就業環境が害されること」とは、
当該言動により、労働者が⾝体的⼜は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能⼒の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
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この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会⼀般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。
実は、ここがポイントです。もちろん、本人が「ハラスメントだ」と感じることも大事なのですが、第3者から見ても、「悪影響を及ぼしているよね・・・・・」と言えることも必要です。
パワハラ防止法が企業に課している、パワハラ防止義務
このホームページでは、何回もブログで、企業が義務付けられるパワハラ防止措置について、述べています。
企業に義務づけられるパワハラ防止措置について、述べた記事
簡単に言えば、パワハラ防止法が企業に求めるハラスメント防止措置は以下の通りです。
パワハラ防止法が企業・法人に義務付けること |
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事業主の方針の明確化及びその周知・啓発 ⑴ 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントがあって はならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。 ⑵ ハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内 容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。 |
相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 ⑶ 相談窓口をあらかじめ定めること。 ⑷ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。 また、広く相談に対応すること。 |
職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応 ⑸ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。 ⑹ 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。 ⑺ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。 ⑻ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様) |
併せて講ずべき措置 ⑼相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること ⑽事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度の利⽤等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。 |
要点をまとめると、
- 就業規則で禁止を明記し、懲戒規定を設ける。
- ハラスメントが禁止であることを、社員に周知する
- 相談窓口を設置して、機能させなければならない
- 相談窓口は、ハラスメントの相談を受けたら、迅速に動き・・・・
- 事実が認められなくても、再発防止措置を講じなければならない。
という事です。
ミニコラム・・・定義よりも、ハラスメント防止法を知ることの方が大事
ハラスメントについて、実は、定義を知る以上に、ハラスメント防止法がどのようハラスメント防止措置を講じることを義務付けているか知る必要があります。
率直に言えば、ハラスメント防止法は、刑罰が無い代わりに、行政(労働局)が指導・勧告に入りやすいものともなっています。
そして、安易にクリアできないのが、ハラスメント防止法でもあります。
ですから、ハラスメント防止法について、知ることはとても大事なことなのです。
まとめ
ハラスメントへの対応、研修、お困りの企業様多いかと思います。
一度、私たち、職場環境改善工房にご相談ください。