パワハラへの会社の責任とは、どういうものでしょうか?
目次
パワハラへの会社の責任とは、「パワハラを防止していく責任」
企業に対して、パワハラを防いでいくよう求めていく世論が高まっています。実際にパワハラが起こったことに対して、企業のトップが謝罪する事例も増えてきています。
岡山放送 社員自殺で遺族に謝罪 長時間労働やパワハラ発言も | NHKニュース
【引用はじめ】
岡山放送 社員自殺で遺族に謝罪 長時間労働やパワハラ発言も
2021年9月29日 20時46分
岡山市にあるテレビ局「岡山放送」の30代の男性社員が、ことし7月に自殺し、社内調査の結果、亡くなる直前の1か月間の残業時間が100時間以上で、上司からパワーハラスメントにあたる発言もあったことが分かりました。会社側は今月、調査結果を遺族に伝え謝罪したということです。
フジテレビ系列のテレビ局で、岡山市にある「岡山放送」によりますと、子会社に出向し、情報番組のディレクターだった30代の男性社員が、ことし7月に自殺したということです。
社内調査の結果、亡くなる直前の1か月間の残業時間が100時間以上だったほか、番組の演出を担当する上司から過度に叱責され、パワーハラスメントにあたる発言もあったことが分かったということです。
岡山放送は「自殺の原因は、長時間労働による疲労や心理的負担が蓄積していたにもかかわらず、適切な措置がとられていなかったことだ」として、今月、調査結果を遺族に伝え謝罪しました。
そして29日に、中静敬一郎社長について、減給3か月の処分を決めました。
男性社員の母親は、NHKの取材に対し「会社からの報告では、どれほど過酷な勤務だったのか分からない部分もあったので、改めて詳細をたずねている。息子の死の真相を早く知りたい」と話しています。
【引用終わり】
今回は、企業や会社のパワハラに対する責任について述べたいと思います。
パワハラ防止法が企業に義務付ける、「パワハラ防止措置」
2020年6月から施行された、パワハラ防止法(改正労働施策推進法)は、企業に対してパワハラを防止するための以下の措置を義務付けています。
1 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
⑴ 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントがあって はならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
⑵ ハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内 容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。就業規則にパワハラ禁止を明記して、研修などで、教育せい!
2 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
⑶ 相談窓口をあらかじめ定めること。
⑷ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。 また、広く相談に対応すること。相談窓口設置せい!
3 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑸ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
⑹ 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
⑺ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
⑻ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)パワハラの相談受けたら、迅速に動け! そして、必ず再発防止措置を講じよ!
4 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
⑼ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
⑽ 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。相談者のプライバシーに配慮せい! 相談したからと言って、不利益な取り扱いするな!
ハラスメントパンフ.indd (mhlw.go.jp) を要約
就業規則等によって、ハラスメント行為を罰則化し、相談窓口の設置を果たすべき役割を義務化することで、未然防止ももちろんのこと、ハラスメント行為が起こった時の再発防止まで義務付けることで、積極的に企業がハラスメント防止を実施することを義務付けています。
労働契約法5条「安全配慮義務」が、企業におけるパワハラ防止の責任の根拠となる
労働契約法の5条は、以下の規定しています。
労働契約法第5条
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
これを、「安全配慮義務」と言います。
パワハラ防止法ができる前は、この安全配慮義務がパワハラ防止の根拠となり、パワハラ行為に対する、損害賠償請求の根拠ともなってきました。
しかし、この規定は、あくまでも民事上の損害賠償請求の根拠であり、企業がどのようにパワハラ防止をしなければいけないのか、具体化するものではありませんでした。そのため、企業として、どういう措置を講じれば、「ハラスメント防止措置を講じたのか」という基準がなかったのです。
パワハラ防止法は、「安全配慮義務」の具現化
パワハラ防止法は、ハラスメントにおける「安全配慮義務」の具現化と言えます。
つまり、何をもって「ハラスメント防止をしたか」、という基準が明確化したことによって、企業がすべきハラスメント防止措置も明らかになったという事です。
では、企業に義務付けられている、ハラスメント防止措置が何かをもう一度おさらいしましょう
つまり、これらの措置を行う事こそ、パワハラ防止に関する会社の義務になるのです。
詳しくは、こちらもご覧ください。
パワハラ防止措置が実施されなければ、損害賠償請求の根拠となる。
ですから、今後、パワハラの損害賠償請求においては、パワハラ防止法に則って適切に会社が対応したかどうか、が焦点になってくることが予想されます。
もちろん、ハラスメント防止法に則って、キチンと対応していれば、問題はないのですが。。。。少しでもハラスメント防止法に則っていない対応がされていた場合・・・
損害賠償請求が認められてしまうということは十分に考えられるのです。
要は、パワハラ防止法が義務として課している「ハラスメント防止措置」を、忠実に実施することが、大切なのです。
まとめ
しかし、企業において、どこまでが「ハラスメント防止法」に忠実なのか、が分からないところも多いかと思いますし、不安要素も多いかと思います。
ですから、そういう企業様こそ、私たちに一度ご相談をいただければと思っております。