パワハラとなる基準には、どういうものがあるでしょうか?

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パワハラかどうかの基準は、「再発防止」から見る。

パワハラかどうかの基準は、「再発防止」の観点から見ていきます。つまり、「ハラスメントの再発を防止をするために、どういう視点で行為を捉えていくか」という観点です。

パワハラかどうかを見ていくために、やっていけないことは、以下の通りです。

パワハラか、どうかを判断すること👈これダメです。

一見矛盾しているようですが、パワハラは「してはいけないこと」ではなく、「してしまうもの」であるという前提で、幅広くとらえ、どういう影響があったのか、そこには、どういう問題があり、放置しておくと、どういう問題が発生すると予見できるのか、を見ていく必要があるのです。

再発防止を義務付けていることから言っても、問題を発見していくことが大事であり、「パワハラである/パワハラでない」と線引きすることは、本質ではありません。

分かり易く言うと・・・

  • どういう悪影響を及ぼしているかどうか。些細な悪影響でも積極的に見つける。
    だから、「何もない」「ハラスメントは無い」などはあり得ない

ということなのです。悪影響から、再発防止策を導き出していくという事です。
もし、たやすく「何もない」「ハラスメントは無い」と結論付けてしますと、ハラスメント防止法が義務づける再発防止を講じることができなくなります。なぜなら、ハラスメント再発防止の構築の考え方が、以下のような考え方になるからです。

再発防止策構築のマインドルート

  • どういう悪影響があるのか。
  • 悪影響の原因にどういう問題があるのか。
  • 問題を解決するために、どういうことが必要か。
  • いつまでに、何をして解決するのか。

問題を、問題として捉えることが大事。なので、悪影響をしっかりと見ていくことが大事

パワハラ防止法が企業に義務付ける、パワハラ防止措置

パワハラ防止法(労働施策総合推進法 第9章)は、パワハラ防止措置として、以下のことを企業に義務付けています。

パワハラ防止法が企業に義務付けていること

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パワハラ防止法が企業・法人に義務付けること
事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 ⑴ 職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントがあって はならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
 ⑵ ハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内 容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 ⑶ 相談窓口をあらかじめ定めること。
  ⑷ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。 また、広く相談に対応すること。
職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応 
 ⑸ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
  ⑹ 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
  ⑺ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
  ⑻ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
併せて講ずべき措置
 ⑼相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
 ⑽事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度の利⽤等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

このハラスメント防止法の肝は、相談窓口が機能することなのです。

この「必ず再発防止を講じなければならない」と義務付けられていることが肝なのです。※正確には「改めて再発防止を講じなければいけない」です。

では、「会社のハラスメント相談窓口は、ハラスメントの相談を受けたら、適切に対応して、必ず再発防止を講じなければいけない!」とは、どういうことか。

  • 適切な対応と再発防止はセットとなる。
  • 少しでも悪影響が認められれば(=事実確認ができれば)、行為者・被害者に適切な対応をする。
    ※「悪影響が認められない」とは、完全完璧に誰から見ても影響が認められないと感じるほどの高いレベル
  • 適切な対応もしつつ、再発防止策も講じる
  • ハラスメントの事実が認められなくても、再発防止を講じなければいけない

ハラスメントの事実が認められなくても、再発防止を講じなければいけないません。ですから、ハラスメントの事実調査と行為者・被害者への適切な対応と、再発防止措置は一貫していなければいけないのです。

パワハラの基準「悪影響」とは、どういうものでしょうか。

まず、ここにパワハラの定義を挙げましょう

パワハラの定義

①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③その雇用する労働者の就業環境が害されること

労働施策総合推進法 第30条の二第一項

この三つの要素が全て揃ってパワハラと言えます。

「悪影響」=「就業環境が害されること」と捉えると、パワハラの基準は「悪影響」であると言っても良いと言えます。では、パワハラが及ぼす影響は、どのようなものでしょうか。

パワハラが及ぼす悪影響

  • 身体的影響
    ※体にケガをする。
  • 精神的影響
    ※パワハラを受け続けると、メンタルに悪影響が出るようになる。
    ※会社に行くことを考えただけで、体が硬直するなどの影響も、悪影響と言える

特に精神的悪影響は、ちょっとした体調異変も見逃さずに対応していくと、より精密な再発防止への対応ができます。

そこで、ハラスメントを受け続ける人のコミュニケーションの取り方と内面について、述べましょう。

ハラスメントを受け続ける人のコミュニケーションの取り方と内面

パワハラによって、メンタル疾患になった例

では、ハラスメントを受け続けると、メンタルにどういうことが起こるのでしょうか。

パワハラによって、メンタル疾患になった例がありますので、紹介しましょう。(https://seiwakai-shimane.com/より)

症例1

20歳代男性

大学卒業後事務系職員。職場結婚し、1子あり。4月に配置換えになったが、上司のやり方に馴染めずストレスを感じるようになる。数ヶ月後、上司のやり方についていけない気持ちが更に強くなり、次第に上司の顔を見るのが怖くなって来た。眠りが浅くなり夜中に何回も目が覚める、朝になるのが嫌と感じる、出来るなら仕事を休みたいと思うようになった。極度にふさぎ込んだ様子にうつ病ではないかと家族が心配し、母親同伴で受診にいたる。

初診時診察状況

打ちひしがれた感じ。
仕事の能率が落ち、上司の指示についていけない自分に自己嫌悪を感じており、問診に対し「自分を責めてしまう」「消えてしまいたい」「自分が悪いと感じている」「死にたいとは思わない」など返答される。
胃部の圧迫感もある。

診断・治療・対策

パワーハラスメント(パワハラ)により発症したうつ病と診断し、十分な休養と職場調整やリハビリが必要と判断した。薬物療法だけでは改善は困難と思われ入院を勧めたところ了解され入院予約(空床待ち)となった。

処方は
セレナール(10)2T /1日2回 朝・夕
スルピリド(100)1T レンドルミン(0.25)1T /就寝前  とした。

治療経過

10日後妻同伴で来院され入院。
大分気分は良い。グッスリ眠れるようになった。
胃の圧迫感がなくなった。
妻からはパワハラが行われている職場状況と本人の気持ちを詳しく聴取した。

以後薬物は変更せず、リハビリテーションとしてSSTと柔道療法を導入し、33日間の入院で軽快退院に至った。

症状改善にもっとも寄与した要因としてSST、柔道療法、職場調整があると思えるので
それらについて記述する。

SST・柔道療法の経過を記す。

SST⇒参照7
SSTは入院中4回、退院後2回の計6回行った。

1回目:見学。次回はやってみたいと話す。またSSTに関する参考書を見せて欲しいと希望があり、数冊の参考書を貸与した。

2回目:苦手な上司との会話場面のロールプレイに挑戦。自らは上司役となり(SSTの技法の一つでロールリバーサルと言う)、相手役のA医師に『強い上司』への対応を見せて欲しいと希望される。

3回目:B医師を相手に、苦手な上司との付き合い方について自分の考えを述べる。
「上司の事を持ち上げて対応するのも一つの手かもしれない」「少しずつ仕事の事を考えられるようになっただけでも、回復していると思う」と話す。

4回目:スタッフ相手に退院後の不安について話す。今は看護師など理解者がいるので安心だが、退院後はそれがなくなり不安と言われる。「妻という最大の理解者が身近にいる」と返しておいた。

5回目:復職後上司への挨拶を著者相手に行う。相手の会話に合わせ過ぎ、相手のペースに引き込まれる傾向があるため、上手く切り上げるようにアドバイスした。

6回目:スタッフ相手に、前回のSSTを踏まえ、復職後の挨拶を手短に切り上げる練習を行う。

柔道療法⇒参照8
毎週2回30~40分程度行った。柔道未経験者で小柄ではあるが、運動能力にすぐれ、終盤には未経験者同士では鮮やかに1本を取れるように上達された。
本人の柔道療法についての感想を記す。

1)入院したての頃は全てがマイナス、否定的で、筋道立った考えが出来なかった。柔道療法を始めて、これらが改善し、入院前の状態に戻った。

2)自分の気持ちの入れ方、対応の仕方が身についた。自分にも「何クソ」という気持ちが取り戻せて非常に有効だった。

3)相手の力のいなし方が柔道を通じて学べた(コミュニケーション力のアップ)。嫌なことを少し割り切れるようになった。

4)最初は柔道と治療が結びつかず恐かった。しかし、何度も参加することで自分らしさを取り戻せた。

5)非常にオリジナリテイのある療法で、既存のものとは一線を画している。気持ちを前向きにする効果は高いと思う。

職場調整
最初は職場のメンタルヘルス関係者と連携を取る事、職場のパワハラ・セクハラ委員に訴える事や診断書に「パワハラによるうつ」と記載して提出し環境調整を組織に委ねる事などを考えた。しかし上司に対する怯えが極めて強く、これらの手段では職場復帰は不可能と思われ、人事関係者に面会に来て貰い主治医面談を行った。主治医としてはパワハラによるうつは労災であり、配置転換以外に本人を救う道はない事を説明した。

これらのリハビリや職場調整により症状は軽快し、職場復帰訓練を経て退院1ヶ月半後には配転された別の課に完全復職に至った。

診療のポイント

本症例は極めて真面目な方であり、SSTや柔道療法に熱心に取り組むことで、所謂『体』で上司との付き合い方の一端を学習された。しかし、こうしたケースの場合、職場調整が最重要であり、職場関係者の協力無しでは職場復帰は困難である。過去には職場調整が受け入れられず、残念ながら退職に追い込まれたケースも経験している。職場調整も精神科医の重要な役目の一つであろう。

症例2

↑の記事の引用です。

20歳代 男性

公務員事務職。3年前から県外の職場で働いている。今年の6月頃から仕事を任される事が多く仕事量もどんどん増えるが、上司は全く手伝ってくれない。また上司は口数の少ない人で気楽に相談が出来る関係ではない。理不尽な要求や、間違った指示も出されるが、反論できない。
8月中旬から食思不振があり、2~3週間で一旦回復したが、その後食思不振増悪。嘔気もあり食事の味がしない。イライラ感、頭痛、動悸、息苦しさがある。会社の保健担当者に勧められ同年10月母親同伴で当院受診となる。

初診時
整容、礼節は保たれている。
仕事の事を考えると憂うつ、涙もろくなった。仕事を休みたいと思うが、体調が悪くても休めば仕事が溜まるだけなので、休めない。先が見えない感じだと語る。
会話はスムースであり、抑うつ状態ではなく、仕事ストレスによる身体症状を主症状とする適応障害と初診医は診断。2週間の休業加療の診断書を提出し、以下処方した。
処方
1)ワイパックス (0.5mg)1錠 昼食後   (抗不安薬)
2)マイスリー  (10mg) 1錠 就床前   (睡眠薬)

経過

2週間後
著者受診となる。
休んでどうですか?>あまり改善されない。眩暈もする。吐き気もあるし、食欲がない。
何が一番困る?>直属の上司が・・うるさい。
仕事は出来る?>出来るとは言われている。
3ヶ月間休業加療を要すとの診断書を提出し、SST及び柔道療法を勧めた。
抗不安薬での治療効果が乏しい為、より強力な抗ストレス効果を期待して抗うつ剤を併用した。
処方
1)セレナール (10mg) 2錠 /1日2回 朝食後 夕食後
2)マイスリー(10mg)1錠
スルピリド(100mg)1錠
レメロン(15mg)1錠   /就床前

4週後
薬が効いた。食べられるようになったと話す。
血色が良くなっており、快活な感じに変わっている。

5週後
SSTや柔道療法にもそれぞれ週1回参加。
柔道療法時「柔道療法や体育館でバスケットボールが出来る事で気持ちが開放された。今は気分も良いし、身体症状もない」と明るく話される。

以後順調に回復。

3ヵ月後
部署変えとなり復職した。
順調に経過していたが、復職1週間後、たまたま以前の直属の上司に聞かないと分からない問題が発生した。聞きに行くと、挨拶も返してくれないし、以前の荒い口調とは異なり逆に敬語で対応されてショックを受けた。また嘔気がするし、心臓が漠々打つ。とても仕事に行けないと訴える。就業困難と判断し、再度3ヶ月休業加療の診断書を提出した。
抗うつ薬のレメロンは除去し、以後は心理面の強化を図る治療に切り替えた。
処方
1)セレナール (10mg) 2錠 /1日2回 朝食後 夕食後
2)マイスリー(10mg)1錠
スルピリド(100mg)1錠 /就床前

その後も食欲不振が続いたが、SST,柔道療法、散歩などにより次第に改善した。
また、本人が上司の言動に「過剰反応している可能性もある」と考え、池波正太郎著「剣客商売:二」新潮文庫、を貸し与え、小題(悪い虫)を読んでみるように指示した。

「悪い虫」(要約)
うなぎの辻売りを商売にしている又八には腹違いの兄がいる。その兄の悪事が思うようにならぬ時、必ず仲間を引き連れて、又八のところに現れ、いきなり殴りつけ、売り上げ金と商売物のうなぎもかっさらって、去っていく。
ある時、路上で狼藉を働く浪人達を瞬時に敗走させた秋山大二郎の後をつけ、その道場を見つけ出した又八は、翌日有り金5両を差し出し、10日間で鍛え上げて、その兄に負けぬ強い男にしてくれと頼み込む。父秋山小兵衛と相談し、無理な頼みを引き受けた秋山親子は又八に「勝負の極意」を伝授する。10日間商売を休み特訓を受けた又八が商売を再開していると、売上金を狙った兄らゴロツキ共が現れる。掴みかかろうとする兄の前で、又八はいきなり双肌脱ぎとなる。色白の肌に、刀痕十数か所。いずれも浅手ながら、受けたばかりの実に生々しい傷である。又八は用意の棍棒をつかんで兄を睨みつけた。半月前の兄への恐怖心は全く消えていた。

「又八は胆の据わった対応で、実戦はせずともゴロツキ共を撃退した」という話である。柔道療法の合間にその読後感を聞き出しながら、「胆力の重要性」について話し聞かせ、この危機を転じてチャンスとして捉えて克服できれば、大きく成長するだろうと励ました。

6ヵ月後
統括上司が来院され、復職に際しての今後の対応について相談がある。
統括上司立会いのもと、以前の直属の上司と本人の3者面談をお願いすると快く了解されるため、事前に同様な場面設定をしてSSTでロールプレイを行った。
ロールプレイでは緊張し、頚部まで赤くなり、腕まくりも何度もしながら、自分がどうしてこのような病気になったのかの理由をしっかりと「直属の上司役の相手」に話す事が出来た。

7ヵ月後
復職。
結局、復職時の三者面談は前例がない事や、産業医の時期尚早であるとの反対意見などにより行われなかった。

復職15日後
受診。
今は全く問題はなく、身体症状は出ない。
前上司とは同一フロアで挨拶は交わすが、まったく接触はない。
薬は服用しているが、眠気など副作用もないと快活に話される。

以後安定して経過している。

診療のポイント
パワハラによるうつ状態や適応障害の治療は、薬物療法、受容的精神療法、休養(休職)だけでは不十分であろう。本症例では、1)SSTで上司に対する対処行動を会得させる、2)柔道療法により胆を練る。3)読書療法:剣豪小説の凄まじいパワハラ克服体験と自分の体験を比較させ、自分自身の体験を適正評価するように認知修正を図る。以上様々な治療的介入により、パワハラ恐怖体験を克服して、身体症状が消失したものと考えた。

自己否定感情は、無意識無自覚に起こり、メンタル疾患の症状を引き起こします。では、こういうメンタル疾患は、どういうコミュニケーションによって、引き起こされるのでしょうか。

メンタル疾患を引き起こす、
パワハラ行為者の無意識無自覚のコミュニケーションの取り方と内面

言い換えれば、他者を否定する「他者否定感情」によって、パワハラ行為者は、パワハラ行為をし続けるのです。そして、この行為を受け続けると、メンタル疾患になっていくのです。

パワハラの基準とは

ですから、パワハラの基準というのは、どういうコミュニケーションの蓄積によって、メンタル異常が発生したのかになるのです。

パワハラの基準

メンタルへの悪影響に、どういうコミュニケーションがあったのか。

メンタルの悪影響には、コミュニケーションの在り方の問題があります。そこを起点に再発防止へとつなげていくのです。

まとめ

パワハラは、「いかに再発防止をしていくのか」という基準から判断していくことが大事です。

そして、「その言動はハラスメントかどうか」という基準では、ダメなのです。

悪影響の事実を見出し、そこにどういう問題があるのかを向き合うことが大事です。

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