パワハラによって、どういう法律違反が明るみになることがありますか?

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パワハラの背景には、法律違反が隠れている場合が多い。

私たちは、多くのハラスメント相談に対応させていただいております。その中でつくづく思うのが、「パワハラ」と思っていたら、実は法違反(※法違反が疑わしいケースも含む)が隠れていた!ということが往々にしてあることです。

もちろん、一般の方は、法違反とパワハラの差が明確にできるわけではありません。一方的な理不尽を「パワハラ」という言葉で置き換えて表現しているに過ぎないケースも多いのです。

ですから、詳しく話をきいてみると、実は法違反の事例として対応した方が問題が早く解決する!ということも多いのです。

今回は、このパワハラに潜む法律違反のことについて、述べたいと思います。

パワハラが損害賠償を認められる法的構造とは

まず、パワハラによって損害賠償請求ができる根拠について述べたいと思います。

パワハラに対して、損害賠償が認められるのは、以下の法的構造があるからです。

  • 民法709条(不法行為)に該当する個人の行為や言動が、
  • 即、民法415条の債務不履行として事業主の責任と直結し、
  • 安全配慮義務に反するから、損害賠償請求が認められる

と覚えたらわかりやすいでしょう。

ちなみに、不法行為の条文はこうなっています。

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法

ここに、 「法律上保護される利益を侵害した」とありますが、 多くのハラスメント行為の中には、本当に法律違反に該当する行為が行われることがあるのです。

ですから、多くの方が「パワハラ」「ハラスメント」と言う行為の背景には、見えない違法行為が隠されている可能性があると考えていますし、私たちもその前提で、ご相談にのっています。

不法行為に該当するパワハラとは?

では、民法709条にあたるパワハラの言動とは、どういうものでしょうか。

一つの裁判例をご紹介します。

パワハラに該当する言動

これは、自死した方の裁判で、パワーハラスメントと認定された言葉です。

  • 毎日、同じことを言う身にもなれ
  • わがまま
  • 待っていた時間が無駄になった
  • 耳が遠いんじゃないか
  • 相手するだけ時間の無駄
  • 反省しているふりをしているだけ
  • 根本的に心を入れ替えれアバ
  • 今日使った無駄な時間を返してくれ
  • 死んでしまえばいい
  • 申し訳ない気持ちがあれば変わっているはず
  • 人の話をきかずに行動、動くのがのろい
  • 指示が全く聞けない、そんなことを直さないで信用できるか。
  • 何で自分が怒られているのかすら分かっていない。
  • 嘘を平気でつく、そんなやつ会社に要るか
  • 辞めればいい

そして、注意していただきたいのは、これらは、ひとことひとことが、それぞれパワハラであり不法行為だと認定されているということです。

現実に、たった一言でも、パワハラ認定されている裁判例もあります。

少し考えたら分かりますが、これらの言葉は、少しストレスが溜まったら、私たちでも、思いがけず言ってしまう事です。つまり、ちょっとしたイライラから発せられた言葉が、裁判では「不法行為」であり、パワハラだと認定されてしまう可能性がとても高いのです。

「パワハラです」と相談してきて、明るみになる2大法律違反は「労働基準法違反」と「労働契約法違反」

実際に、「パワハラです」と相談いただき、詳しくお話をきいていると、明確な法違反が明らかになる時があります。よくあるのが「労働基準法違反」と「労働契約法違反」です。

労働基準法と労働契約法には、大きく以下のような違いがあります。

  • 労働基準法(刑事)・・労働契約の最低基準を設けている。この法律に反した事業主は、刑事罰で罰せられる。
  • 労働契約法(民事)・・労働者を保護するために、労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにする基準となる法律。

実は、ハラスメントで法違反になるケースでも、「①実際の法律違反行為を実行する」か「②法律違反行為を口頭や文書で仄めかすか」という2タイプに分かれます。実は、法違反を臆面もなく実行したり、仄めかしたりする行為は多いのです。

それでは、労働基準法労働契約法が「パワハラの現場」において、どのように関わってくるのか述べたいと思います。

①労働基準法

労働基準法が労働契約の最低基準を設けていて、刑事罰があることはすでに述べたとおりです。

では、「パワハラの相談」の中で、明らかになってくる労基法違反には、どういうものがあるでしょうか。

1 労働基準法15条(労働条件の明示)

労働基準法15条には、以下の規定があります。

(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働基準法

いわゆる労働条件通知書の明示なのですが、パワハラがおこっている会社で、20名以下の会社で多く見られる法違反です。

労働契約を締結した時に、使用者は労働条件を厚生労働省が定める方法で明示しなければいけないよ、とこの法律は言っているのです。
私たちはご相談時、小規模の企業の場合にコンプライアンス意識を測るために、この労働条件通知書が明示されているのかどうかを、ご相談者に聴くことが良くあります。明示されていない場合は、遵法精神に欠けることを前提に、いろいろとお話を伺っていくことになります。

2 労働基準法第37条(時間外手当・深夜割増賃金など)

ハラスメントが起こっているところでは、時間外手当が支払われていないとか、深夜の割増賃金が適正に支払われていないというケースがあります。この条文は、以下のようになっています。

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。

 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働基準法。

一般的な言葉で言うと、残業代が労基法の基準に基づいて、適正に支払われていないということが明るみになることが、私たちのハラスメントの相談では多かったりします。

3 労働基準法36条(36協定に反する残業がある)

労働基準法32条によって、残業は禁止とされています。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法

そして、このこの時間外に労働させた場合は、労基法三十七条によって時間外手当を支払わなければなりません。

しかし、労基法三十六条に基づく労使協定があれば、残業ができることになっています。労基法三十六条をご紹介します。

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。

 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。

 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。

 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。

 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。

 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。

 行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

 前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。

 第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。

労働基準法

しかし、もともと残業禁止に対する、残業を認める措置(残業を認めないと、業務が滞ることがある)として、この労基法三十六条は規定されています。いわば特例でもあるので、労使協定の結び方も指針などで、事細かく決められています。つまり、協定さえあれば残業ができる!というものでもないのです。

簡単に言うと、36協定では、「①どの部署の人が、②どの業務で、③最大何時間まで残業できる」と定めなければいけません。
しかし、36協定がある会社の社員が私たちのところにパワハラ相談するときは、36協定に無い残業をさせているケースが多くあるのです。

②労働契約法

労働契約法は、もともと労働裁判の判例が蓄積し、法理として確定したものを法律として明文化させたという成立経緯があります。したがって、労働契約の締結や変更が合理的なものになる基準を示しています。

私たちのパワハラ相談の現場では、この労働契約法に抵触するような言動があったことをよく聞きます。例えば、管理職が「給料カットにするぞ!」と仄めかしたり、感情的に一方的に「降格にするぞ!」と仄めかしたりするケースです。

それでは、パワハラなどのハラスメント相談で見られる労働契約法違反になるような例を見てみましょう。

1 労働契約法第5条(安全配慮義務違反)

労働契約法第5条は、以下のように規定しています。

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働契約法

もともと、この安全配慮義務規定は、労働者が使用者に損害賠償を請求する根拠として、法理として発展してきたものです。パワハラによって、行為者のみならず、企業までもが損害賠償をしなければいけなくなるのは、この規定が根拠となります。

また、労働関係の法律に反する行為があった場合の、損害賠償請求の根拠としても、この条文は非常に重要です。
例えば、以下の法律違反が認められた場合に、損害賠償請求が認められる可能性もあります。

  • 労働安全衛生法
  • 労働基準法

ですから、この安全配慮義務の観点から、相談内容を深く掘り下げていくと、別の法律違反が明らかになっていくことがあります。

2 労働契約法第17条1項

労働契約法第17条1項は、次のような規定になっています。

(契約期間中の解雇等)
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

労働契約法

派遣労働者や、期限付きの非正規労働者が「パワハラ!」と相談された時に、良くあるのが「辞めろ!」「明日から来なくていい」という言動です。
期限付きの契約で働く場合、解雇できる要件が、正社員など期限の無い労働者よりも厳しくなります。
しかし、実際の現場においては、労働法に精通しているわけでもないので、辞めろなどの言葉が出てしまうこともありますし、ひどい場合においては、本当に辞めさせることを実行するケースもあるのです。

職場で受けた理不尽な行為を「パワハラ」と表現する傾向・・
だから、パワハラの相談では、話を「整理する」ことが必要。

多くの人は労働法を詳細に知りません。そのため、職場で受けた理不尽なことを「パワハラ」と形容することが多々あります。
しかし、相談を通じて、細かく話を整理していくと、そこには「パワハラ」の一言で片づけられない、法違反の実態が浮かび上がってくるのです。

ここで述べていることは、「パワハラ」の相談から浮かび上がる法律違反の基本形を示しました。
しかし、実際には、様々なケースが考えられます。ですから、パワハラ相談で一番大切なことは、話を「整理する」という事です。

話を整理することで、相談者の抱えている理不尽や問題の本質が分かり、解決するための道筋が分かってくるので、相談者も安心するのです。

まとめ

「パワハラです。」と相談されるかたは、事実が見えずに相談をされる方が多いです。感情的になっていて、別の法違反が隠れているのさえ気づけないのです。

私たちは、豊富な実績をもとに、相談者の問題を整理し、ハラスメントの相談を解決するお手伝いをしております。
その点で、ハラスメントでお悩みの方のお役に立てればと思っています。是非、私たちにご相談ください。

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